哲学とアートのための12の対話 2024

土曜の放課後
After School on Saturday

 第8回 ゲスト対話4

〈教養〉について考えてみる

岡田暁生 x 吉岡洋

第8回 ゲスト対話4
〈教養〉について考えてみる
ゲスト:岡田 暁生(おかだ あけお)

日時:2024年11月2日(土曜日) 午後2時〜4時
会場:京都市立芸術大学「講義室1」(臨時会場)
参加者:34名

 「教養」とは何か。音楽学者の岡田暁生氏が専門としてこられた西洋近代音楽は、文学、美術、哲学の知識と並んで、まさに「教養」そのものとみなされてきました。「教養」とは、なくても生きていけるけどあれば人生がより豊かになる、あるいは人にええカッコができる知識や蘊蓄、つまりは余裕のある人にのみ許される知的「贅沢品」なのでしょうか?
 そうではありません。教養の本質的意味は陶冶にあります。つまり陶芸や鋳物において素材となる土や金属を練り鍛えて形を与えてゆくように、自分自身を形成してゆくことです。ドイツ語では教養のことをBildung(ビルドゥング)と言い、まさに「形作ること」を意味しています。教養にとって知識とは目的ではなく、むしろ手段であると言えるでしょう。
 けれども現代では知識が目的化されています。学術研究においては専門的知識だけが尊重され、教養的側面は軽視されます(大学教育においても「教養課程」という考え方が消滅しました)。また一般社会においても、マニア的・オタク的な知識ばかりを競い合うような風潮が支配しています。この対談では、教養が知識に還元されてしまう現代世界がいかに間違っているか、話し合ってみたいと思います。(吉岡洋)


岡田 暁生(おかだ あけお) ——第8回ゲスト対談者

1960年京都生まれ。大阪大学文学部博士課程単位取得退学。ミュンヘン大学およびフライブルク大学で音楽学を学ぶ。現在京都大学人文科学研究所教授。文学博士。
著書『音楽の聴き方』(中公新書、2009年、吉田秀和賞受賞、2009年度新書大賞第三位)、『ピアニストになりたい - 19世紀 もう一つの音楽史』(春秋社、2008年、芸術選奨新人賞)、『恋愛哲学者モーツァルト』(新潮選書、2008年)、『西洋音楽史 - クラシックの黄昏』(中公新書、2005年/韓国版:2009年/中国版:2016・19年)、『オペラの運命』(中公新書、2001年、サントリー学芸賞受賞、『すごいジャズには理由がある』(アルテス、2016年)、『音楽の危機』(中公新書、2020年、小林秀雄賞受賞)など。
『スコラ 坂本龍一 音楽の学校』(NHK)や『名曲探偵アマデウス』(NHK・BS)など、テレビ出演多数。


講座資料(参考動画リンク)